まずは基本から!技能実習と特定技能って何が違うの?

日本で働く外国人のための制度には、大きく分けて二つのメインプレイヤーがいます。それが「技能実習制度」と「特定技能制度」です。この二つは、作られた目的やルールが全く違いますが、実際には多くの人が技能実習を卒業したあとに特定技能に進んでいて、まるで一つのコースのようになっています。まずは、この二つの制度がどんなもので、どこが決定的に違うのかを見ていきましょう。
表の顔は「国際貢献」、でも本当は…?技能実習の仕組み
技能実習制度の公式な目的は、「日本の進んだ技術やスキルを外国に持ち帰ってもらい、母国の発展に役立ててもらう」という、とても立派な国際貢献です。しかし、実際には人手が足りなくて困っている日本の会社が、働き手を確保するための手段として利用されてきたという側面も強く、この「表の顔」と「本当の姿」の大きなギャップが、たくさんの問題を生んできました。
この制度には、色々な組織が登場します。
- 送出機関: 外国人の母国にあって、日本で働きたい人を集めたり、選んだり、簡単な日本語を教えたりする会社です。正直なところ、質が良いところと悪いところの差が激しいのが現実です。
- 監理団体: 日本の商工会のようなグループがこの役目を担います。技能実習生を日本の会社に紹介し、ちゃんとルール通りに実習が進んでいるかチェックしたり、実習生の悩みを聞いたりする、いわば日本でのお世話役です。監理団体にもランクがあり、優良な「一般監理事業」は最長5年、普通の「特定監理事業」は3年までしか実習生を受け入れられません。
- 外国人技能実習機構(OTIT): 国が作った見張り役の組織です。実習計画がおかしくないかチェックしたり、会社に抜き打ち検査に入ったり、実習生のSOSに対応したりする、制度全体の番人のような存在です。
技能実習制度の忘れてはいけないルールはこれです。
- 仕事はあくまで「実習」: やっていい仕事は、最初に国に提出した「技能実習計画」という計画書に書かれていることだけ。それ以外の仕事をやらせるのはルール違反です。
- 転職はできない: 基本的に、一度配属された会社を辞めて、別の会社に移ることはできません。これが、たとえ嫌な職場でも我慢するしかなく、最終的に逃げ出してしまう(失踪)原因の一つになっています。
- 家族は呼べない: 実習している間、母国の家族を日本に呼んで一緒に住むことはできません。
- 対象の仕事はたくさん: 建設、食べ物作り、農業、服作りなど、90種類以上の仕事が対象になっています。
はっきりと「人手が足りません」に応える、特定技能制度
2019年にスタートした特定技能制度は、「人手不足で本当に困っている特定の業界を助ける」という、非常に分かりやすい目的を持っています。この制度では、外国人は「実習生」ではなく、きちんと法律で守られた「労働者」として扱われます。仕組みも技能実習よりずっとシンプルです。
- 受入れ機関: 会社が外国人を一人の社員として直接雇います。
- 登録支援機関: 会社だけでは外国人のサポートが大変な場合に、お手伝いをしてくれる専門の会社です。アパート探しから銀行口座の開設、日本語の勉強の手伝い、悩み相談まで、法律で決められたサポートを会社の代わりにやってくれます。
特定技能制度のすごいところは、技能実習の問題点を解決しようとしている点です。
- 仕事は堂々と「労働」: 日本人の同僚と同じように、仕事に関係することなら色々な業務ができます。計画書に縛られることはありません。
- 転職できる: 同じ仕事の分野の中であれば、別の会社に転職できます。これは、より良い給料や環境を求めて動ける、労働者にとってとても大切な権利です。
- 長く働ける可能性がある: 制度は2段階あります。「特定技能1号」は合計5年までですが、試験に合格して「特定技能2号」になれれば、ビザの更新に制限がなくなり、結婚相手や子供も日本に呼べるようになります。
- 対象の業界: 介護、建設、レストラン、農業、ホテルなど、特に人手が欲しい16の業界に絞られています。
ひと目でわかる!制度くらべ:技能実習 vs. 特定技能
ポイント | 技能実習制度 | 特定技能制度 |
---|---|---|
目的 | 国際貢献(建前) | 人手不足の解消(本音) |
立場 | 実習生 | 労働者 |
転職 | 原則ムリ | 同じ分野ならOK |
期間 | 最長5年 | 1号は5年まで、2号はずっといられる可能性あり |
家族 | 呼べない | 1号はムリ、2号はOK(配偶者・子) |
入国時のテスト | ほとんどない | 技能と日本語のテストあり(免除ルールあり) |
お世話役 | 監理団体 | 登録支援機関(会社が直接やってもOK) |
このように、二つは全く別の制度ですが、技能実習2号をまじめに最後までやり遂げた人は、特定技能1号になるためのテストが免除されるという、特別な近道があります。このルールがあるから、多くの会社は「将来の有望な社員候補を育てる期間」として技能実習制度を使っているのです。この現実が、日本の外国人材受け入れの大きな特徴になっています。
日本への第一歩!準備と最初の1年間
外国から日本に来て働き始めるまでの道のりは、ワクワクするものであると同時に、大変なこともたくさんあります。特に、日本に来る前にかかる高いお金と、そのせいで背負うことになる借金は、とても大きな問題です。
どうやって選ばれるの?母国での準備
日本で働きたいと思ったら、まずは母国にある「送出機関」という会社に申し込みます。送出機関は、日本の「監理団体」と協力して、日本の会社がどんな人を欲しがっているかを聞き、それに合う人を探します。書類審査や面接に合格すると、日本行きの切符を手にすることができます。しかし、この過程で怪しい「ブローカー」がお金を要求してくることもあり、これが借金を増やす原因になることも少なくありません。
なぜ借金を背負ってしまうの?高い初期費用のワナ

技能実習制度の一番の問題は、日本に来るための費用を、ほとんど全部自分で払わなければならないことです。送出機関に払う手数料や日本語の授業料など、その合計は平均で50万円以上になることも。国によってはもっと高くなります。普通の若い人にとって、これはとんでもない大金です。そのため、多くの人が親戚や銀行から借金をして来日します。つまり、夢と希望を持って日本の地に降り立った瞬間、すでに大きな借金を背負っている状態なのです。この借金を一日でも早く返すために、もっと給料の良い仕事を求めて、ルールを破って職場からいなくなってしまう「失踪」が後を絶たないのです。
日本で困らないために!来日前の研修

日本に来ることが決まったら、二つの研修を受けることになります。
- 入国前講習: 母国で受ける研修です。基本的な日本語や日本のルール、仕事の概要などを学びます。ただし、この研修のレベルは送出機関によってバラバラです。
- 入国後講習: 日本に着いてから約1ヶ月間、会社に行く前に受ける研修です。これは法律で決められています。ゴミの出し方のような生活の知恵から、自分たちの権利を守るための法律まで、日本で生きていくために必要なことをみっちり学びます。
いよいよスタート!技能実習1号としての1年
研修が終わると、いよいよ「技能実習1号」として会社での生活が始まります。期間は1年。会社には、仕事の先生役「技能実習指導員」と、生活の相談役「生活指導員」がいて、あなたをサポートしてくれます。お世話役の監理団体も、ちゃんとやっているか定期的に見に来てくれます。この1年で日本の生活に慣れ、仕事の基礎を学びます。そして、2年目に進むためには、1年の終わりに「技能検定」というテストに合格しなければなりません。これが最初の大きなチャレンジです。
レベルアップの道!技能実習2号・3号に挑戦
最初の1年をクリアし、テストに合格すると、さらにスキルを磨くための次のステージが待っています。ここでは、技能実習のメイン期間ともいえる2年目から5年目について、分かりやすく解説します。
技能実習2号へ!最初の大きな壁
1年間の「技能実習1号」から、さらに2年間滞在できる「技能実習2号」になるためには、「技能評価試験」というテストに合格する必要があります。これは、実技と筆記の両方があり、仕事の基本的なことができるかをチェックされます。筆記テストは、日本語が苦手な人でも分かるように、ふりがなが付いていますが、それでも勉強は必要です。無事に合格できれば、会社が手続きをしてくれて、在留資格がレベルアップします。
技能実習2号のリアルな生活
「技能実習2号」になると、さらに2年間、合計3年間日本で働けるようになります。この期間は、1年目で覚えたことをベースに、もっと専門的なスキルを身につけていきます。
気になる生活の現実はどうでしょうか。
- お給料: 法律では、同じ仕事をしている日本人と同じか、それ以上のお給料をもらえることになっています。ただ、税金や保険料、家賃などが引かれるので、実際に手元に残るお金(手取り)は、月10万円~15万円くらいの人が多いようです。
- 天引きされるお金: 会社が用意してくれた寮の家賃や水道光熱費は、給料から天引きされます。でも、法外な金額を取られないように、家賃は周りのアパートの値段と同じくらいでなければならない、といったルールがあります。
- 住むところ: 会社が寮やアパートを用意してくれることが多いですが、部屋のきれいさや広さは会社によってまちまちです。
最長5年を目指す!技能実習3号への道
合計3年の実習が終わった後、さらに2年間延長できる「技能実習3号」という上のステージがあります。ただし、これは誰でも行けるわけではなく、かなり厳しい条件があります。
まず、あなたを受け入れている会社と、お世話役の監理団体の両方が、国から「優良(ゆうりょう)」というお墨付きをもらっている必要があります。これは、法律をきちんと守り、実習生を大切にしている証です。さらに、あなた自身も、もっと難しい「技能検定3級」というテストに合格しなければなりません。
もう一つ、ユニークなルールがあります。それは、3号を始める前に、一度必ず1ヶ月以上、母国に帰らなければならないことです。この一時帰国の飛行機代は、会社か監理団体が出してくれます。これらの条件を全てクリアして、初めて合計5年の技能実習が認められます。
技能実習のレベルアップまとめ
ステージ | 技能実習1号 | 技能実習2号 | 技能実習3号 |
---|---|---|---|
期間 | 1年 | 2年 | 2年 |
目標 | 基本を覚える | 一人前になる | プロになる |
レベルアップ条件 | (入国) | 基礎のテストに合格 | もっと難しいテストに合格 |
その他の条件 | 最初の研修を受ける | 1号をまじめに終える | 会社と監理団体が「優良」&一度母国に帰る |
このように、「技能検定」というテストは、滞在を延長し、次のステップに進むための「関所」のような役割をしています。そして「優良」認定は、まじめな会社が報われるための仕組みなのです。
人生のターニングポイント!「労働者」になるための特定技能ビザ
技能実習を卒業した人が、日本で働き続けるために選ぶ最もポピュラーな道が、「特定技能1号」ビザへの変更です。これはただのビザ更新ではありません。「実習生」という立場から、自分の権利を持った「労働者」へと生まれ変わる、まさにキャリアの転換点です。
夢への近道!「黄金の切符」とは?
本来、特定技能1号になるには、「技能」と「日本語」の二つの難しいテストに合格しなければなりません。しかし、ここに最高の裏技があります。それは、「技能実習2号」をまじめに最後までやり遂げた人は、この二つのテストを受けなくてもOKというルールです。多くの人がこれを「黄金の切符」と呼びます。
ただし、この近道が使えるのは、技能実習でやっていた仕事と、特定技能でやろうとする仕事の分野が同じ場合だけです。例えば、技能実習で「建設」をやっていた人が、特定技能でも「建設」の仕事をするならテストは免除。でも、もし「介護」の仕事がしたいなら、新しく介護のテストを受け直す必要があります。
ラスボス級の書類集め!ビザの変更手続き

テストが免除されるからといって、何もしなくていいわけではありません。ここからが大変な手続きの始まりです。あなたと、あなたを新しく雇う会社は、山のような書類を集めて、出入国在留管理庁(入管)にビザの変更を申請します。この手続きには、だいたい1ヶ月から3ヶ月くらいかかります。
- あなたが集める主な書類: 申請書、写真、パスポート、在留カードはもちろん、技能実習をちゃんと終えた証明書、健康診断の結果、税金や年金を払った証明書など。
- 会社が集める主な書類: 会社の戸籍謄本のようなものから、経営状態が分かる決算書、税金を納めた証明、そして一番大事な、あなたとの雇用契約書や、日本人と同じ給料を払うことを約束する書類、あなたをどうサポートしていくかを書いた「支援計画書」など、信じられないほどの量になります。
この手続きは、実は入管が会社を厳しくチェックするチャンスでもあります。ちゃんとした経営をしているか、法律を守っているか、外国人をサポートする気があるか。ここで会社の実力が試されるのです。
「実習生」から「労働者」へ!手に入れる新しい力
この大変な手続きを乗り越え、特定技能1号のビザが手に入ると、あなたの立場は劇的に変わります。あなたはもう「実習生」ではありません。正式な「労働者」として、同じ仕事の分野なら、他の会社に転職する権利を手に入れます。これは、もっと良い給料の会社に移ったり、もし今の職場が嫌なら辞めたりできる、とても大きな力です。
この変化は、会社にとっても大きな意味があります。
- 会社側のメリット: 日本の文化や言葉にも慣れ、仕事もできる「即戦力」をゲットできます。海外から言葉も分からない未経験者を呼ぶより、ずっと楽で安心です。
- 会社側の課題: 社員が転職できるようになったので、辞められないように、良い給料を払ったり、働きやすい環境を作ったり、努力し続けなければなりません。もう「技能実習だから辞めないだろう」という甘えは通用しません。
このように、特定技能へのステップアップは、あなたにとっては大きなチャンスであり、会社にとっては「社員に選ばれ続ける努力」が始まる、真剣勝負の始まりなのです。
プロとして働く!特定技能1号と、その先の2号の世界
特定技能ビザを手に入れたあなたは、いよいよ日本で本格的に自分のキャリアを築いていくことになります。まずは最長5年間の「特定技能1号」としての生活、そしてその先にある、日本にずっと住める可能性を秘めた「特定技能2号」への険しい道のりについて見ていきましょう。
最長5年間!特定技能1号としてのプロ生活
「特定技能1号」のビザでは、全部で5年間、日本で働くことができます。ビザの更新は1年ごとなど、短い期間で行います。この間、あなたは会社に直接雇われた一人の社員として、同じ仕事をしている日本人と同じか、それ以上のお給料をもらうことが法律で約束されています。これは不当に安い給料で働かされることを防ぐ、とても大切なルールです。
また、あなたを雇った会社(またはサポートを頼まれた登録支援機関)は、あなたが日本で安心して暮らせるように、ずっとサポートし続ける義務があります。具体的には、アパートの契約更新の手伝いや、役所の手続きの付き添い、日本語の勉強の機会づくり、仕事や生活の悩み相談などです。この手厚いサポートがあるのが、特定技能制度のいいところです。しかし、5年経つと1号のビザはそれ以上更新できません。次に紹介する「特定技能2号」にレベルアップするか、日本を離れるか、どちらかを選ばなくてはなりません。
超難関!特定技能2号への挑戦
「特定技能2号」は、日本で長く、安定して暮らしたい人にとっての最終目標ともいえる資格です。この資格が取れると、ビザ更新の期間に上限がなくなり、更新さえ続ければずっと日本で働き続けられます。そして何より大きいのが、結婚相手や自分の子供を「家族滞在」ビザで日本に呼んで、一緒に暮らせるようになることです。
しかし、特定技能2号になるのは、本当に大変です。求められるのは、ただ長く働いた経験ではなく、「熟練した技能」です。これは、周りの人に仕事を教えたり、現場全体のリーダーとして指示を出したりできる、いわば監督レベルのスキルを意味します。
2号になるためのメインルートは「特定技能2号評価試験」に合格することですが、このテストはとにかく難しいことで有名です。
- テストの内容: 高度な仕事のスキルだけでなく、安全管理やスケジュール管理、後輩の指導方法といった、リーダーとしての能力が問われます。
- 言葉の壁: テストは全て日本語で、専門的な言葉がたくさん出てきます。公式なルールではありませんが、実際には日本語能力試験(JLPT)のN2という、かなり高いレベルの日本語力がないと合格は厳しいでしょう。
- 低い合格率: 仕事の分野にもよりますが、合格率は軒並み低いです。建設業で10~20%、自動車整備に至っては3%台というデータもあり、まさに狭き門です。
1号と2号、何がどう違う?
ポイント | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|
求められるスキル | 一人前に仕事ができる | リーダーとして指導できる |
いられる期間 | 合計5年まで | 更新すればずっといられる |
家族と一緒に住める? | できない | できる(配偶者・子) |
会社のサポート | 必要 | 不要(一人前と見なされる) |
永住権への道 | この期間はカウントされない | この期間はカウントされる! |
技能実習から特定技能1号へはたくさんの人が進みますが、1号から2号へ進めるのは、ほんの一握りのエリートだけです。この難しいテストは、日本に長く住み、家族も呼ぶことを許される、本当に優秀で日本社会に貢献できる人を厳しく選ぶための「関所」なのです。あなたにとっては、このテストに合格できるかどうかが、日本での未来を大きく左右します。そして会社にとっては、この貴重な人材を失わないために、テストの勉強をサポートするなどの投資が必要になります。
夢の永住権!手に入れるための条件とは?
日本で働く多くの外国人が、キャリアの最終ゴールとして目指すのが「永住権」です。永住権があれば、もうビザの更新を心配する必要もなく、仕事も自由に選べ、家を買うときのローンも組みやすくなるなど、メリットがたくさんあります。しかし、永住権を手に入れるまでの道のりは長く、とても厳しい条件をクリアしなくてはなりません。
要注意!永住権の申請で一番大事な落とし穴
永住権をもらうための大原則は、「日本に10年以上、続けて住んでいること」です。しかし、ここに多くの人が知らない、とても重要なルールが隠されています。それは、10年のうち「働くためのビザで5年以上、続けて日本に住んでいること」も必要で、しかも、この「働くためのビザ」の期間に、「技能実習」と「特定技能1号」の期間はカウントされない、という決まりです。
これは、一体どういうことでしょうか?例えば、技能実習で3年、特定技能1号で5年働いたとします。日本に住んでいる期間は合計8年ですが、永住権の申請に必要な「働いた期間」は、この時点ではまだ1日もカウントされていません。ゼロからのスタートです。カウントが始まるのは、原則として「特定技能2号」のビザをもらってからなのです。つまり、特定技能2号として5年間働き、合計の滞在期間も10年を超えたときに、ようやく永住権の申請ができるようになります。これは本当に大事なポイントなので、絶対に覚えておいてください。
永住権をゲットするための「3つのクリア条件」
永住権の審査では、主に以下の三つのポイントがチェックされます。
- まじめな生活を送っていること
交通違反も含め、日本の法律をきちんと守っていることが大前提です。犯罪歴がないのはもちろんのこと、税金や年金、健康保険料を、決められた日までにちゃんと払っているかが、ものすごく厳しく見られます。申請する時にまとめて払ってもダメで、過去に一度でも支払いが遅れたことがあると、審査で不利になってしまいます。 - 自分の力で生活できること
国の世話にならず、自分(と家族)の力で、この先もずっと安定して暮らしていける経済力があることを証明しなければなりません。安定した仕事についていて、毎月きちんとお給料をもらっていることが大切です。特定技能2号として働いていれば、普通はこの条件をクリアできます。 - 永住することが、日本の利益になること
これは少し難しい言葉ですが、一番大事なのは先ほど説明した「滞在期間」のルールです。その他にも、今持っているビザで一番長い期間(例えば3年)をもらっていることなども、あなたが日本に信頼されている証として見られます。
「身元保証人」になってくれる人を見つけよう
永住権を申請するときには、日本人か、すでに永住権を持っている人に「身元保証人」になってもらう必要があります。保証人は、あなたの借金を代わりに返すような責任はありませんが、「この人は信頼できる人物です。日本のルールを守るように私もサポートします」と国に約束する、大切な役割です。そのため、保証人になってくれる人自身も、安定した仕事についている必要があります。
永住権の条件まとめ
クリア条件 | 具体的な中身 |
---|---|
住んでいる期間 | ・合計10年以上、日本に住んでいる。 ・そのうち5年以上は働くビザ(技能実習と特定技能1号はダメ!)で住んでいる。 |
まじめさ | ・犯罪や交通違反がない。 ・税金、年金、健康保険料を、一度も遅れずに払っている。 |
お金 | ・安定した仕事と収入がある。 |
信頼度 | ・今持っているビザの期間が一番長いもの(例:3年)であること。 |
保証人 | ・日本人か永住者で、安定した収入がある人にお願いする。 |
永住権への道は、ただ長く日本にいればたどり着けるものではありません。特定技能2号という高い山を越え、さらに何年もかけて、社会の一員としての信頼をコツコツと積み上げていく、まさに人生をかけた挑戦なのです。
さよなら技能実習、こんにちは「育成就労」!何が変わるの?
日本の外国人受け入れを長年支えてきた技能実習制度ですが、あまりにも問題が多かったため、ついにその役目を終えることになりました。2027年までには、全く新しい制度「育成就労」に生まれ変わります。これは、日本の外国人政策が大きく方向転換することを意味します。
なぜ技能実習制度はなくなるの?
技能実習制度は、残念ながら多くの悲しい問題を生み出してきました。ひどい暴力やパワハラ、給料が払われない、長時間働かされるといった人権問題が絶えず、海外からは「現代の奴隷制度だ」とまで言われてしまいました。特に、日本に来るために背負う高額な借金が、若者たちを「失踪」へと追い込む大きな原因になっていました。この「国際貢献」というキレイな言葉の裏で起きていた現実が、もう隠しきれなくなったのです。こうした国内外からの強い批判が、制度をやめて、新しい仕組みを作る大きな力となりました。
新しい主役「育成就労」制度ってどんなの?
これから始まる「育成就労」制度は、これまでの建前を捨てて、「日本のために人材を育て、確保する」という、はっきりとした目的を掲げます。そのゴールは、3年間で外国人を特定技能1号と同じレベルまで育てることです。この新しい制度には、技能実習の問題点を解決するための、たくさんの改良が加えられています。
- 転職できる!(転籍): これが一番大きな変化です。同じ会社で1年か2年働いて、ある程度のスキルと日本語力が認められれば、同じ仕事の分野なら、別の会社に転職(転籍)できるようになります。これは、労働者が自分でキャリアを選べるようになり、会社同士が良い人材をめぐって競争する時代が来ることを意味します。
- 特定技能へのスムーズな接続: 育成就労でできる仕事は、特定技能の仕事と基本的に同じになります。これにより、3年間の育成が終わった後、スムーズに特定技能1号のビザに進めるよう、道筋がはっきりします。
- 入国前に日本語の勉強が必須に: 日本に来る前に、日本語能力試験(JLPT)のN5レベルという、基礎的な日本語力を身につけていることが条件になります。
- 会社の費用負担が増える: 外国人が借金で苦しむ問題をなくすため、これまで本人が払っていた日本に来るための費用(手数料や飛行機代)の一部を、日本の会社が負担することになります。
- お世話役のチェックが厳しくなる: 今までの「監理団体」は、もっと中立な立場の「監理支援機関」に変わります。ちゃんと会社をチェックしているかを、さらに外部の人が監査する仕組みも導入されます。
ここが変わる!技能実習から育成就労へ
ポイント | 技能実習制度(これまで) | 育成就労制度(これから) |
---|---|---|
目的 | 国際貢献(建前) | 人材の育成と確保(本音) |
転職 | できなかった | 1~2年後、条件付きでできる! |
日本語 | 来てから勉強 | 来る前に基礎は勉強してくる |
初期費用 | ほとんど本人負担 | 会社の負担が増える |
ゴール | バラバラだった | 3年で特定技能1号レベルになること |
お世話役 | 監理団体 | 監理支援機関(チェックが厳しくなる) |
この変化、特に「転職の自由」は、会社にとって大きなインパクトがあります。これまでは一度来たら3年は辞めないだろうと安心できましたが、これからは給料が安かったり、職場環境が悪かったりすると、せっかく育てた人材が、もっと条件の良い都会の会社に移ってしまうかもしれません。会社も、社員に選ばれ続けるための努力が、これまで以上に必要になるのです。
みんながハッピーになるために!立場別アドバイス
制度が大きく変わる今、この複雑な道のりをうまく乗り切るためには、それぞれの立場の人が賢く行動することがとても大切です。最後に、会社の皆さん、日本で働く外国人の皆さん、そしてサポートする機関の皆さんへ、それぞれ具体的なアドバイスを送ります。
会社の社長さん・人事担当の皆さんへ
- 「選ばれる会社」になる覚悟を持つ: これからは「どうやって人を集めるか」より「どうやって人に残ってもらうか」が重要です。周りの会社の給料を調べ、働きやすい環境を整え、「うちの会社にいれば、特定技能2号まで目指せるよ」という将来の夢を見せてあげることが、優秀な人材をつなぎとめる鍵です。
- 本当にかかるお金を計算しておく: 新しい制度では、お給料以外に、外国人が日本に来るための費用や、日本語教育のサポートなど、これまで以上にお金がかかります。これらの「隠れコスト」を最初からしっかり予算に入れておきましょう。
- 良いパートナー(監理支援機関)を選ぶ: 新しい制度では、お世話役である「監理支援機関」の質がますます重要になります。ただ手続きをするだけでなく、本当に親身にサポートしてくれる、信頼できるパートナーを選びましょう。良いパートナーは、良い人材を連れてきてくれます。
- 特定技能2号への道を応援する: 優秀な特定技能1号の社員は、会社の宝です。5年で帰国させてしまうのはもったいない。会社として、難しい2号のテストに挑戦するのを積極的に応援しましょう。勉強の時間をあげたり、リーダーとしての経験を積ませたりすることは、未来への最高の投資になります。
日本で働く・働きたい外国人の皆さんへ
- 自分の権利とルールをちゃんと知る: 新しい制度では何ができて、何ができないのか。特に「転職できる権利」について、正しい知識を持つことが、あなた自身を守る力になります。分からないことは、信頼できる人にどんどん質問しましょう。
- 大切な書類は全部とっておく: 契約書、給料明細、テストの合格証、税金や年金を払った証明書など、自分に関する書類は「宝物」だと思って、なくさないように保管してください。ビザの更新や永住権の申請で、必ず必要になります。
- 日本語があなたの未来を作る: 日本で成功するための一番の武器は、日本語能力です。仕事でも、生活でも、キャリアアップでも、日本語ができればできるほど、あなたの可能性は無限に広がります。毎日少しずつでも勉強を続けましょう。
- 長い目で人生を計画する: もし永住権がゴールなら、そのための準備は今日から始まっています。税金をきちんと払う、交通ルールを守るといった、日々のまじめな生活が10年後のあなたを助けます。目先のことだけでなく、日本で信頼される人間になるという、長期的な視点を持ちましょう。
サポートする監理支援機関の皆さんへ
- 「定着」を助けるプロになる: これからは、ただ会社に人を紹介するだけでは生き残れません。会社がどうすれば外国人に長く働いてもらえるか、そのためのコンサルティング(良い日本語教育の紹介やキャリア相談など)ができる、真のプロフェッショナルを目指しましょう。
- 新制度の専門家になる: 顧客である会社が、新しい「育成就労」制度にスムーズに対応できるよう、法律や費用、人材育成の方法について、誰よりも詳しくなり、的確なアドバイスができる存在になりましょう。
- 「正直」が一番の武器: 海外の怪しいブローカーと付き合うような機関は、もう誰からも信頼されません。「誠実であること」こそが、良い会社と良い人材の両方から選ばれるための、一番のブランドになります。